天才達のIQ

キャサリン・コックスという心理学者が、歴史上の天才と称された300人のIQを推定したサイトがある。

http://www.iqcomparisonsite.com/Cox300.aspx

これらの数値は、かなり過大評価された数値であり、コックスの研究には大いに疑問が残る。

その理由は、文豪ゲーテの成人時代のIQを210と推定していることからも、この数値が過大評価され過ぎており、統計学的に何の根拠も持たない数値だからである。

標準偏差を16とした場合のIQ210の理論上の出現率は、数千億人に1人であるため、現実と矛盾してしまう。

この数値は、偏差IQではなく、実年齢と精神年齢の比率から算出した比率IQである可能性が高いため、偏差IQに変換すべきである。

このサイトでは、偏差IQと比率IQの理論上の変換値の算出をしている。

http://hiqnews.megafoundation.org/John_Scoville_Paper.htm

この表によると、比率IQの210は、偏差IQに変換すると、179.1(SD16)となる。

つまり、ゲーテの成人時代のIQは179と算出すべきである。他の人物も同様である。

歴史上の天才達のIQの算出方は、研究者によっても異なり、同一人物でも幼少期と青年期と晩年期のスコアは、必ずしも同じではないため、算出すること自体にも無理がある。

現に、ゲーテが今の時代まで生存していたと仮定して、実際にIQテストを受験させたとしても、179の数値を出せるわけではない。

IQテストは20世紀の初頭に誕生したため、20世紀を代表する天才達の中には、実際にIQテストを受験した人物も何人かいたといわれている。

しかしながら、その人物が天才であるかどうかを判断するのに、IQテストの点数そのものは、全くの無意味である。

最重視すべきことは、実際に受験したIQテストの点数そのものではなく、その人物の能力や業績からIQを逆算したほうが合理的なのである。

物理学者のリチャード・ファインマンがIQテストを受験したとき、彼のスコアは120程度だったという説がある。

この話が本当か嘘かは不明ではあるが、仮に本当だったとしても、彼が20世紀を代表する天才の1人であることには変わりがないため、実際に受験したIQテストの点数そのものが、その人物の知的能力を示すことにはならないのである。

同様に、アインシュタインのIQにも様々な説があるが、それらのどのスコアを持ち出しても、アインシュタインの知性を示すことにはならないのである。

つまり、どんなにIQテストの点数が高くても、その人物の実生活の能力や業績が高く評価されていないのであれば、その人物は天才であるとみなすことはできない。

その人物の実生活の能力や業績は、IQテストの点数そのものよりも、はるかにその人物の知的能力を正確に表すといえるのである。

このことからも、天才達のIQを算出するのに最適な方法は、その人物の亡くなるまでの業績と、その人物が生存していた時代の人口の割合から判断し、偏差IQとして、統計学上可能なまでの数値を算出することである。

例えば、ゲーテが亡くなったのは1832年である。

1832年の世界人口は、およそ11億4000万人である。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%BA%BA%E5%8F%A3

1832年の世界人口から算出可能な理論上の最高IQ値は、196(SD16)である。

ゲーテの業績は、当時のドイツ国内においてほぼ間違いなく最高峰であったと思われるが、世界的知名度は現在に比べて低かったと思われる。

1832年のドイツ国内の人口は、推定2000万人程度だったと思われる。

ゲーテが当時のドイツ国内で最高の知性を持つと評価されていた可能性は相当高いため、彼のIQをおよそ2000万人の1人に相当する185(SD16)であると算出するのである。

コックスが算出したゲーテのIQが179であるというのは、ゲーテが26歳の時点での業績から推定したスコアであるため、晩年期の業績を完全に無視した数値である。

同一人物でも、年齢によってIQは異なるため、亡くなるまでのゲーテの業績を無視し、天才達のIQを青年期の時点で算出したコックスの研究は、全く意味のないものである。

従って、どんなに早熟であろうと、どんなにIQテストの点数が高くても、亡くなるまでの業績が高く評価されていないのであれば、真の天才とは言えないのである。

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